マインドフルネス
医療の現場から始まった「マインドフルネス」がビジネスの世界で広がりを見せています。
アメリカの上場企業の35%が研修に取り入れている「マインドフルネス」とはどういうものでしょうか。
●なぜマインドフルネスが広がっているのか?
マインドフルネスには、下記のような効果があるとされています。
・集中力アップ
・意欲の向上
・創造性アップ
・記憶力の向上
・免疫力の向上
・人間関係の改善
・幸福度の上昇
マインドフルネスがビジネスの世界で広がったきっかけに、Googleの事例があります。
Googleでは、知能指数(IQ)は高いけれど心の知能指数(EQ)が低く、なかなか成果をあげられなかった人たちが、マインドフルネスの研修を取り入れたことによって、他者との関わりが円滑になり、生産性が上がったとされています。
EQ(英: emotional intelligence quotient、EQ)とは、自分の感情をコントロールしたり、相手を思いやる能力のことです。
このようなEQを高めるためにマインドフルネスが有効であることや、上記の数々の効果から、ビジネスの世界においてマインドフルネスが広がっていったと思われます。
●マインドフルネスとは
マインドフルネスの正式名称は、「マインドフルネスストレス低減法」です。
マサチューセッツ大学の教授である、ジョン・ガバット・ジン博士が仏教の思想や座禅の瞑想から、宗教色を排除して作った心理療法の一つと言われています。
マインドフルネスとは、「注意を払っている状態」とか「気づき」とか「今、ここにある自分にしっかりと注意を向けている状態」ということです。
私たちの脳はいつも絶え間なく何かを考えています。しかし多くの場合、今自分がしていることではなく、それ以外のことを考えています。
研修中であっても、昨日の仕事で失敗したことを後悔していたり、食事中であっても今月の支払いのことを考えていたり、友人と遊んでいても明日のプレゼンテーションの心配をしていたり、「今、ここ」でしていることに注意を払っていないことが多いのです。
マインドフルネスとは、「今、ここ」でしていることに注意を払うことです。
研修中なら、その話を聞いていることに注意を払い、そのことだけを考える。
食事中なら、食事に注意を払い、その食材の食感であったり、味や風味に注意を払い、遊んでいる時は、その遊んでいることだけに注意を払う、ということです。
●マインドフルネス瞑想
マインドフルネスと言えば、「マインドフルネス瞑想」が有名です。
「呼吸瞑想」は呼吸にだけ注意を払い、頭の中に浮かんでくるいろいろな思考に気付き、また呼吸に意識を向けるものです。
「食べる瞑想」は、食べる食材にだけ注意を払い、その色、質感、香り、味に注意を払うものです。
マインドフルネス瞑想を続けると、本能や感情を司る偏桃体と理性を司る前頭葉の関係が対等になると言われています。
両者の関係が対等になることで、前頭葉(理性)が偏桃体(感情)を押さえつけることができなくなった時に起こるストレス反応を減らすことができるのです。
つまり、マインドフルネス瞑想を行うことでストレスを軽減することができる、ということです。
●心と身体の回復にマインドフルネス
瞑想をすると、絶えず働いている脳を休ませることができると言われています。
ゆっくりと身体を休めても疲れが取れない場合などは、身体ではなく脳が疲れているのです。
特に悩んでいる時は、脳は同じことをぐるぐると考えています。
生きていると悩みがない状態というのはなかなかありません。
しかし、その悩みのほとんどは、「過去の後悔」や「未来の不安」から来ています。
その「過去と未来」を切り離し、「今」に注意を払うこと、そのことに「判断や評価」をしないこと、それがマインドフルネスな状態です。
マインドフルネスが心と身体の回復に有効であるという研究結果はたくさんあります。
マインドフルネスを学び、実践することで心と身体を健康にして、さらに人間関係が円滑になり仕事のパフォーマンスも上がるならば、試してみる価値はあるのではないでしょうか。
【参考文献】
「今ここにある自分」に意識をむける マインドフルネスこそ最強のクスリ 山下 あきこ 著
世界のエリートがやっている最高の休息法 久賀谷 亮 著
究極のマインドフルネス Daigo 著
心の知能指数(英: emotional intelligence quotient、EQ)は、心の知能 (英: emotional intelligence、EI) を測定する指標である。心の知能とは、自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能を指す。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)