注目の人的資本経営とは

人的資本経営

ウェルビーイング経営

健康経営

これらに共通することは、働く人がよい状態で働けるように企業が環境や制度を整えることに注力する経営と言えます。

人は「感情の生き物」と言われるように、感情によって行動が左右されることは多々あります。ロボットのようには働けません。ですから、働く人の情緒が安定し、良い状態で働ける環境や制度は、人のパフォーマンスに影響を与えます。

投資家たちもそこに注目し、投資対象の企業を選択するときに財務情報だけでなく「人的資本」にも目を向けるようになりました。

その流れの中で2022年8月30日に「人的資本可視化指針」が公表され、2023年度より有価証券報告書には「人的資本情報」の記載が義務化されます。

●人的資本経営とは

そもそも人的資本とは、人の持つ知識や能力を最大限に引き出し、そこから価値を生み出す「資本」として捉ええたものです。

人的資本経営とは、人の能力を高め、経営戦略人的戦略を連動させて持続的に企業価値を高めていく経営のことです。

2022年9月に発表された「人材版伊藤レポート」によれば

『人的資本を含む無形資産が企業の源泉となる中、経営における人材や人的戦力の重要性はこれまで以上に増しており、国内外のトップも経営上重要な人財の確保等を重要なアジェンダと認識している。』

と記されており、人材が企業価値を高める要素としていかに重要であるかが伺えます。

人的資本情報開示事項(例)

「人的資本可視化指針」より1部抜粋

・育成

 研修時間や研修費用、研修と人材開発の効果など

・ 従業員エンゲージメント

 社員満足度、離職率、定着率など

・ 流動性

 採用、退職コスト、人材確保など

・ ダイバーシティ

正社員数および 性別、地域別内訳、育児休業後の従業員の復職率及び定着率(男女別)

・ 健康・安全

 労働災害の件数、全従業員の欠席率、週48時間を超える労働者の割合

・ 労働慣行・コンプライアンス

 自社の労働力に関係する深刻な人権問題及び件数

などが挙げられています。

これまで企業価値を高める要素としては注目されていなかった事項が盛り込まれています。

●能力を最大限に発揮できる環境・制度

企業価値を高める「人的資本」を最大限に引き出すためには、人が心地よく働ける環境を整え、能力を高める学びへの投資、あらゆる個人的な事情を抱える人でも働けるような多様な働き方への制度改革などが必要です。

人権問題が起こることのないようハラスメントなどに配慮したり、研修を通して各々のスキルを上げたり、出産育児、介護などでの離職を余儀なくされることのないような制度の創設など、だれもが良い状態で働き続けられる企業が、将来性のある企業と認識されます。

●人的資本への投資

人的資本への投資において、「研修」は重要な開示事項の一つです。

しかしながら、前述の2022年9月「人材版伊藤レポート」によれば、日本の学びへの投資は世界各国に比べて大変低くなっています。

個人の社外学習・自己啓発を行っていない人の割合も世界で断トツに高く、企業の学びへの投資額も低い水準にとどまっている、と記されています。

学びは、個人の知識やスキルを上げ、能力を向上させるものです。これまで、研修にかけるお金は「費用」とされてきましたが、これからは、人的資本に対する「投資」という位置づけになります。

中長期的な企業価値を高める手段として、人的資本への投資は不可欠な時代と言えるのではないでしょうか。

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