ミスした部下の指導法
あなたは部下がミスした時どんな言葉をかけますか?
「もう二度とミスはするな。」
「ミスはだれにでもあるから気にするな。」
「ばかやろう!この役立たず!」
さすがに最後の言葉はハラスメントになるので、これはよくない例だとおわかりですよね。
では、ミスした部下にどんな言葉をかけると、部下の成長につながるのでしょうか?
●ミスを意識する
「もう二度とミスはするな。」
そう言われた部下はどう思うでしょうか?
上司としては、もう二度とミスはして欲しくないので、そう言うのは当たりまえです。
一方、部下はミスをして落ち込んでいる上に、もう二度とミスはできないというプレッシャーを感じます。
そのため、とてもストレスがかかります。
もう一度ミスをしたら、どうなるのだろう?と不安でいっぱいになってしまいます。
「ミスはだれにでもあるから気にするな。」
優しい上司の言葉です。
こう言われると部下は少し救われたような気持ちになります。
しかし、この二つの言葉は、「ミス」についてだけ話しています。
部下は「ミス」をして落ち込んでさらにプレッシャーを感じたり、上司の優しい言葉で救われたりしますが、どちらにしても「ミス」に意識が向いています。ミスにだけ意識が向いたままでは、成長には繋がりません。
●大切なのは
大切なのは、「今後どうなりたいか」です。
部下の意識を「ミスした自分」から「今後の自分」に変えることが重要なのです。
そのためには、あえて「ミス」という言葉を使わず、ポジティブなイメージを持つように導くことが必要なのです。
●人が導かれるワケ
実は少し前から、駆け込み乗車をする人へのアナウンスが変わっていることにお気づきでしょうか?
以前は、「駆け込み乗車はおやめください。」というアナウンスが電車のホームでよく流れていました。
最近では「次の電車をご利用ください。」というアナウンスに変わっているところが増えているそうです。
人の脳は、単語を理解するより文脈を理解するのに時間がかかります。
つまり、「駆け込み乗車」という単語で電車に駆け込む姿が想像され、その後少し時間をかけて「おやめください。」という文脈を理解するのです。
ですから、アナウンスを聞いた途端に「駆け込み乗車」という単語に反応して、駆け込み乗車をする人が出てきていたそうです。
そこで、「次の電車」というアナウンスに変更したところ、「次の電車」という単語に反応して、駆け込み乗車をする人が減ったというのです。
つまり、「ミスはだれにでもあるから気にするな。」という言葉は優しい言葉で部下の心を軽くする効果はありますが、意識という観点からすると「ミス」という言葉を使わない方がいい、ということになります。
ミスした過去よりも、これからどうなりたいかの未来に目を向けることが成長には欠かせないのです。
●ミスの原因
未来に目を向けると言っても、ミスの原因を追究しなくてもいいのか?
と疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。
部下に
どんな自分になりたいか?
そのためにはどんなことをすればいいか?
を考えてもらうと、自然とミスの原因には自ら気付くものです。
上司から「ここがダメ!」「あそこがダメ!」とダメ出しをされるより、自ら気づいた方がその原因を取り除くための行動がとりやすくなります。
●ミスした部下の指導法
ミスした部下にすべきことは、部下の感情に寄り添いながら、この先の目的に目を向けさせることです。
仕事で役立つ自分になるために
仕事でみんなから頼られる自分になるために
信頼して仕事を任せてもらえる自分になるために
どんな自分になりたいかに意識を向けさせてやる気を引き出し、さらにはポジティブな感情にまで導くことができたら、それは最高の指導法だと言えます。
ピンチはチャンス。
部下がミスした時こそ、部下を今以上に成長させることができるチャンスなのです。
(参考文献)
「アドラー心理学×幸福学でつかむ!幸せに生きる方法」平本あきお 前野隆司 著