ハラスメントが起きにくい職場の5つの条件

今回は、「安心して働ける職場」をつくるうえで重要な、ハラスメントが起きにくい職場に共通する5つの条件についてご紹介します。

厚生労働省の令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」の結果や、私自身が支援してきた現場の実感をもとにまとめました。

ハラスメントが起きにくい職場の5つの条件

ハラスメントが起きにくい職場の5つの条件は下記になります。

1. 上司と部下の間に「話しやすい」関係がある

一番の土台は、上司と部下の間に“心理的安全性”があること

日頃から雑談や相談のしやすい関係が築かれていれば、行き過ぎた言動があっても早めに対応できます。

逆に、日頃の関係が希薄だと、「言いづらい」「何も言えない」「怖いから我慢する」といった悪循環が生まれます。週1回の1on1や、月1回のチーム対話ミーティングなど、“話すことが習慣になっている”組織は、自然とハラスメントの芽が摘まれやすいのです。

2. 「許容文化」がある

人間関係のトラブルの多くは、ミスを責めすぎる文化から生まれます

「なんでそんなこともできないんだ」「前にも言っただろ」といった言葉は、萎縮と怒りを生みます。

一方で、ハラスメントの起きにくい職場は、失敗を学びの機会ととらえ、「次にどうするか?」に焦点を当てる傾向があります。
たとえば、「うまくいかなかった原因は何か?」「今度はどんな工夫をしようか?」と対話を促すことで、責任ではなく改善に意識が向きます。

3. 多様性(年齢・性別・立場)を受け入れる風土がある

厚労省の調査では、マタハラや育休関連のトラブルも依然多く報告されています。
この背景には、「女性はこうあるべき」「若手はまだ意見しなくていい」といった「無意識の思い込み」(アンコンシャス・バイアス)が潜んでいます。

反対に、多様性を尊重する職場では、「いろいろな人がいて当たり前」「違っていい」という土壌があり、無意識の思い込みからくるハラスメントが起きにくくなります
研修やダイバーシティ推進だけでなく、日常の会話で多様性を認め合う言葉が飛び交っているかがカギです。

4. ハラスメント防止のルールと運用が機能している

就業規則などでのハラスメントの禁止など、ルールがあるだけでは意味がありません。
実際、ハラスメントが起きにくい企業では、「相談すればちゃんと対応してくれる」という安心感があります。

  • ハラスメント防止規程がわかりやすく社内に浸透している
  • 窓口が相談しやすい雰囲気で、対応が迅速・公正
  • 定期的に研修や周知が行われている

こうした運用体制があることで、ハラスメントが「許されないもの」であるという文化が組織に根づくのです。

5. 日常の「小さな違和感」を見逃さない風通しの良さ

ハラスメントは、ある日突然起きるものではありません。
最初は、「あれ、今のちょっと言いすぎじゃない?」「最近○○さん元気ないな…」という小さな違和感から始まります。

その小さなサインに気づける職場――つまり、従業員同士が互いに関心を持ち、支え合う文化がある職場では、深刻化を防ぐことができます。

●ハラスメント防止対策は第一歩

ハラスメントの防止対策は、単なるトラブル回避ではありません。

それは「人が安心して力を発揮できる職場」をつくるための土台です。

今回ご紹介した5つの条件は、どれも特別なスキルや制度ではなく「日常の在り方」に関わるものです。
ハラスメントが起きにくい職場は、結局のところ、人を大切にしている職場

そして、人を大切にしている職場は、心理的安全性が高く、コミュニケーションもよく取れるので、生産性が上がります。その結果、業績も上がっていくのです。

だからこそ、ハラスメント防止対策は、職場づくりと業績向上の両方につながる“第一歩”となるのです。


ぜひこの機会に、自社の取り組みを見直してみてはいかがでしょうか?

*参考文献*

職場のハラスメントの関する実態調査 結果概要

(令和5年度厚生労働省委託事業)

https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001259093.pdf

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