「あり方」と「やり方」

働く上で重要なものに「あり方」「やり方」があります。

やり方とは、ノウハウであり、行動のことです。

一方、あり方とは、考え方、価値観のことです。

まずは、あり方(考え方、価値観)がしっかりとできあがっていて、やり方(ノウハウ・行動)が生まれることが理想です。

●あり方とは

企業で言えば、あり方とは、すなわち「経営理念」

経営理念がしっかりと社員に浸透していれば、やり方をいちいち指導しなくても、各々が理念に基づいた行動が取れます。

例えば、接客の業務において、

・お客様対応を迅速に行う。できるだけお待たせしない。

という「やり方」だけを社員に教えていたとします。

社員はその通り、迅速に対応しましたが、

「あの人の対応は、せかせかしていて、せかされているような気がして落ち着かない。もっと落ち着いた丁寧な対応をして欲しい。」

とクレームが入ります。

一方、「お客様の幸せを第一に」という「あり方」(経営理念)をしっかり理解してもらうように社員に教えていたとします。

すると、社員はお客様お一人お一人の特性を見て、対応するようになります。

このお客様は、素早い対応が好きな方、このお客様は丁寧な対応が好きな方。

それぞれのお客様の幸せを考えて対応するようになります。

つまり、臨機応変な対応ができる、ということです。

「やり方」だけを教えていると、最初は効率的に思えますが、いろいろなパターンが出てきた時に、その都度「こういう場合はどうするのか」というマニュアルを増やしていかなければなりません。

しかし、「あり方」(経営理念)をしっかり理解している社員は、自分で考え、対処できる、自立型の人材になることができます。

●自分で考える

やり方ばかりを教えていると、自分で考える、ということができなくなります。

もしなにか業務上で困ったことが起きても、上司に報告するだけで済ませるようになります。

「上司が解決策を考えてくれるから、自分は考えなくてもよい。」とか

「どうせ自分が何かを考えたところで、話を聞いてもらえない。」

などの考えから、自ら考えることをしなくなります。

答えは、自分が見つけるものではなく、だれかが与えてくれるものだと思ってしまうからです。

フランスの哲学者パスカルが遺した言葉に「人間は考える葦である。」というものがあります。

人間は、大きな宇宙からみれば葦のようにか弱く小さな存在だけれど、「考える」ということができる偉大な存在だという意味です。

考えることができるからこそ、人間は偉大な存在になれるのです。

ですから、仕事においても、「考える」ということをしなくなっては、ただのか弱く小さな「葦」になってしまうのです。

●やり方よりもあり方

上司が部下を育てる場合、「やり方」ばかりが先行して、大切な「あり方」(経営理念)をおろそかにしていることはないでしょうか?

根底にしっかりとした「あり方」(経営理念)があれば、そして、それをすべての社員が理解していれば、その「あり方」から大きく外れた「やり方」は生まれないはずです。

「やり方」よりも、まず「あり方」(企業理念)をしっかり教えることが重要なのです。

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