2025年のハラスメント防止対策
明けましておめでとうございます。
みなさまにとりまして、2025年が健康で充実した年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
さて、まずは昨年のハラスメントの相談件数についてお伝えしたいと思います。
一般社団法人徳志会のプレスリリースによると、2024年の職場におけるいじめ・嫌がらせの相談件数は全国で年間8万件以上だという報告があります。これは、急増している状況です。
さらに、2025年4月には、東京都で「カスタマーハラスメント防止条例」が施行されます。
これは、顧客の著しい迷惑行為の防止を目的とした条例です。国もこのようなカスタマーハラスメント防止対策を法的に制定する動きがあるとの報道もあります。
これまで以上に、企業は「従業員の幸せを守る」ことが求められてきます。
つまり、2025年はハラスメント防止対策に対する関心がますます高まっていくと予想されます。
●ハラスメントの現状
ハラスメントのアンケートを取ると、被害者は一定数存在するのに、自分はハラスメントをしていると自覚している人は0人であることが多くあります。
それは、ハラスメントの行為者が「無自覚」にハラスメントを行っているからです。
ある研究では、ハラスメントの行為者にハラスメント行為について伝えても、「自分がやっているのは、指導・注意だ。」とハラスメントを認めない人が9割、というデータもあります。
多くの人が「自分はハラスメントとは無関係だ。」と思っていることが、ハラスメントが職場からなくならない大きな原因のひとつです。
ハラスメント研修を実施し、ハラスメントはだれでも被害者にも加害者にもなり得るということ、そしてだれもが職場のハラスメントを目撃する第三者として事情を聴かれる立場にもなり得るということを理解してもらう必要があります。
●ウェルビーイングの広がり
一方で、ポストSDGsと言われているウェルビーイングが広がってきています。
ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に良好な状態のことで、使われる場面で、健康とか福祉とか幸福と訳されます。
このウェルビーイングが、これから世の中で広く知られる概念となり、経済や教育などさまざまな場面で重要視されていくようになるでしょう。
ウェルビーイングな人は、そうでない人に比べて創造性が3倍、生産性は31%、売上は37%高くなり、欠勤率が41%、離職率が59%低くなるという研究結果があります。
ウェルビーイングな職場(幸せな職場)にするためには、ハラスメントをなくす必要があります。社員のみなさんが安心して幸せに働くためには、いかなるハラスメントも職場にあってはなりません。
●ハラスメント防止対策
2022年4月に、パワハラ防止対策が中小企業にも義務化されました。
どんな会社にも、相談窓口の設置をはじめとしたパワハラ防止対策が義務付けられていますが、実情はどうでしょうか?
相談窓口はあるけれどもだれも利用していない、という状況があったり、社長が「パワハラは絶対に許さない」といった社長メッセージを出していなかったり、まだまだパワハラ防止対策が実施されていない企業もたくさんあります。
中小企業にもパワハラ防止対策が義務化されて3年。
ニュースでは悲しいパワハラ被害者の実情が伝えられることがあります。
ハラスメント0への道のりはまだまだ遠いと言わざるを得ません。
社員の方が安心して幸せに働ける職場を作るために、2025年はハラスメント防止対策を重要な項目として位置づけ、実施してみてはいかがでしょうか?
*参考文献*
一般社団法人徳志会のプレスリリース
職場におけるいじめ・嫌がらせの相談件数は全国で年間8万件以上」職場におけるパワーハラスメントの最新状況をリサーチ【2024年版】
「パワハラ上司を科学する」 津野 香奈美 著
「ウェルビーイング」 前野 隆司 前野マドカ 著