感情知性が人を生かす
今回は、近年リーダーシップやチームビルディングの場で注目されている「感情知性」についてお伝えします。
そしてこの感情知性は、ハラスメントの防止にも、非常に大きな力を持っています。
●感情知性とは何か?
EI(Emotional Intelligence)は、感情知性という概念で、自己や他者の感情を認識、理解、管理する能力を指します。
一方、EQ(Emotional Intelligence Quotient)は、その感情知性を数値化または評価する指標として使われます。EQは、心の知能指数とも言われています。
EQテストの結果が高ければ、EIの能力が高いと判断されることがあります。
感情知性は、アメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンが広めた概念で、次のような5つの要素で構成されています。
1.自己認識力
自分の感情に気づき、言語化できる力。
2.自己管理力
怒りや焦りなどの感情を、冷静にコントロールする力。
3.動機づけ
目的に向かって粘り強く行動する力。
4.共感力
他人の感情を読み取り、思いやる力。
5.社会的スキル
良好な人間関係を築き、維持する力。
どれも、職場での人間関係やリーダーシップに欠かせないスキルです。
●感情知性の高いリーダーは信頼される
感情知性の高いリーダーは、感情に流されず、自分と他者の状態を的確に把握しながら行動します。
たとえば…
•部下が緊張している時に、無言のプレッシャーをかけずに、安心を与える
•誰かが落ち込んでいる時に、すぐに指摘せず「何かあった?」と声をかけられる
•会議で苛立ちを感じたときにも、感情的に反応せず、冷静に事実で語れる
こうした行動は、社員やチームにとって「信頼の種」になります。
実際、ハーバード・ビジネス・レビューの記事でも「高業績のリーダーのうち7割以上が高いEQを持っていた」という報告が出されています。
●感情知性の低い組織で起こること
逆に、感情知性の低い組織では、こんなことが起こりがちです。
•リーダーが不機嫌を隠せず、職場の空気がピリピリする
•部下が萎縮して意見を言えず、創造性が失われる
•小さな感情のぶつかり合いがエスカレートし、ハラスメントに発展する
つまり、感情の扱い方を間違えると、組織はゆっくりと壊れていくのです。
●感情知性は鍛えられる
実は感情知性は「生まれつきの才能」ではなく、「後から育てられる能力」だと言われています。
では、どうやって鍛えたらいいのでしょうか?
私は、次の3つのステップをおすすめしています。
1.感情の言語化
たとえば「イライラする」と思ったとき、これは「不安からくる怒りかも」と内省し、自分の感情を言語化して明確にしてみましょう。
2.相手の感情を想像する習慣を持つ
相手の表情やしぐさなどから相手の感情を想像する習慣を持ちましょう。
3.感情を扱える場をつくる
職場で“感情を語れる場”があると、心理的安全性が育ちます。業務連絡だけでなく、お互いの感情を語れる場をつくることで、自分の感情の扱い方がわかってくるようになります。
特に、1on1ミーティングや感情を共有できる日報制度などは、EQ向上に効果的です。
●感情は、人間関係の“水脈”です
感情は「合理的でないもの」と切り捨てられがちですが、実は人間の行動の根底にある“水脈”のようなものです。
人間は感情を持つ生き物です。感情を切り捨てていては、良い関係は築いていけません。
感情をていねいに扱うリーダーこそが、人を生かし、チームを変え、組織を未来へ導いていけるのではないでしょうか。
●人を生かす力
EQが高い人は「優しい人」と見られることも多いですが、それだけではありません。
感情知性は、「戦略的に人を生かす力」でもあるのです。
感情を理解し、共感し、でも巻き込まれず、冷静に判断する。
そんな在り方は、まさに今の組織に求められる“新しい強さ”ではないでしょうか。
感情と向き合いながら、人が幸せに働ける組織を育てていきましょう。